▶ドライブ・レベル(励振レベル)は、水晶を発振させ、駆動させ続けるための電力のことです。
水晶振動子は受動部品であって、発振回路に組み込まれた水晶はICによって駆動させられています。
ドライブ・レベルはICのもっているパワーによって規定されるので、厳密には水晶振動子の仕様項目ではありません。
しかし、その値によっては水晶の発振に悪影響を及ぼすことがあるので、
水晶の仕様項目にドライブ・レベルの項目があり、「100μW max」などと記載されることがあります。
水晶メーカからセット・メーカに対して「この水晶振動子はできるだけドライブ・レベル100μW以下の回路で使ってください」という意味で記載されています。
▶小型水晶ではドライブ・レベルに注意
日本水晶デバイス工業会(QIAJ)の解説書に図3 のようなグラフが掲載されています。
このグラフは縦軸がESR 、横軸がドライブ・レベルとなっています。
意味するところは、HC-49/Uという大きな水晶振動子であれば、10mWあたりまではほぼ低いESRで推移しているのに対して、
小型になると低いESR値で安定しているのは0.1 mWあたりまでです。
このグラフの場合、小型水晶に0.8〜0.9mW以上の励振レベルが加わるとESR値が大きくなっていくのが見てとれます。
ESRは抵抗成分で発振阻害要因ですから、あまりにESRが大きくなると発振不良を起こす可能性が大きくなります。
常にではありませんが、ドライブ・レベルが大きすぎると発振トラブルを起こすことがあります。
▶7.5×5mmのような大型水晶なら1 mW 程度流れても問題ないかもしれないが、
2.0×1.6mmのような小型水晶なら1mW流れるとトラブルになる可能性大
水晶が小型になればなるほど高ドライブ・レベルの悪影響を受けやすいというデメリットがあります。
「回路マッチングの必要性」のところでMET(7.5×5mm)の30MHzを搭載していた基板を改版して
BIT(2.0×1.6mm)の30MHz振動子を単純に載せ換えた事例を紹介しましたが、
もし7.5×5mmのときに1mWが印加されていて水晶自体が大きいので問題にならなかったとしても、
そこへ単純に2.0×1.6mmを乗せ換えていたら、ドライブ・レベルの面からもトラブルを起こしていた可能性があります。
ドライブ・レベルも回路マッチングによって調整できるので、この点からも回路マッチングによってリスクを最少化しておくという視点が重要です。
▶ポータブル機器用で小型水晶を使うときは低ドライブ駆動のICが安全
一般的なICの場合、大まかな目安としてドライブ・レベルは100μW程度が望ましいですが、
パッケージのサイズや周波数、仕様、ICそのものなどによって異なります。
最近ではポータブル製品用の低ドライブで駆動するICが増えています。
低消費電力化が主目的ですが、水晶振動子が小型化しているので低ドライブのほうが水晶にとっても好都合です。
大きい水晶と通常のICを使っていた基板を改版するとき、ICをそのまま流用して水晶を小型化するとリスクが高くなります。
小型水晶を使う場合は3μW typなどの低ドライブのICを使うほうが安全です。
最適なドライブ・レベルにするためにも、やはり現物の回路でマッチングをとるのがベストです。
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