このところ回路マッチングの依頼が大変増えています。
しかも搭載される振動子がますます小型化し、実装密度が非常に高くなっており、評価のための準備作業や部品の取り換えなどの作業で大変時間が掛
かっています。
そのため評価に長時間を要することが多くなり、ときとして作業中に回路パターンの焼損、搭載部品そのものの破損などの事故が起こることがあります。
このようなことのないよう、スピーディな評価作業を進めるため、評価依頼の際はユーザにおいても下記の諸事項への配慮が求められます。
● 事前に水晶が基板上で発振することを確認
回路マッチング用の基板を受領して最も困る問題は、指示どおりに電源を投入しても水晶が発振しないことです。
発振をしないことにはいかなる評価作業もできないので、まずユーザにおいては入手したサンプルがその基板上で発振することを確認したうえで、水晶メーカに基板を送付してください。
● 電源投入方法を明示(電圧、場所)
回路を受領して電源を投入しようとしても、どこにどのように投入するか資料に明記されてないことがあります。
何ボルトで、どこにどのように投入/接続するかを資料に明記してください。
できれば30cmくらいの長さで赤色の線(VDD用)と黒色の線(VSS、GND用)が基板に接続してあると、前準備が省けて素早く取り掛かれます。
● 発振回路周りの回路図
基板全体の回路図は特に必要ないので、IC名と発振回路部分の回路図を拡大して送ってください。
そのなかでは、あらかじめ搭載されているコンデンサや抵抗の値を明記してください。
ベストの回路定数を割り出すためには、現状の定数を正確に把握する必要があるからです。
● 水晶振動子を搭載しないで袋に入れて送ってもよい
九州電通の採用している抵抗挿入法という評価方法の場合、基板から水晶振動子を取り外して可変抵抗RVと直列に接続し、再度回路に接続して評価を進めます。
最近の高密度実装、超小型部品が増えている複雑な回路基板の場合、さらに超小型のC、R部品が近接していたりすると水晶やCR部品を取り外すだけでも大変困難で、
いろいろと試している過程で誤って回路パターンを破断したり搭載部品を破損したりする事故が起こることがあります。
そのような事故を起こさないために、試料の振動子を基板に搭載しないでビニール袋に入れて送る方法があります(2〜3個あれば安心)。
それにより水晶を基板から取り外す手間が省けて、事故を防ぐことができるようになります。
もっともその場合でも上述のとおり、ユーザの元で別の基板、別の水晶で発振することは確認しておくことが求められます。
● 緊急事態における解析依頼の場合、サンプル注文と基板の送付を同時に行う
通常であれば試作用のサンプルを依頼し、できあがったサンプルをユーザにて搭載し、
発振を確認したうえで水晶メーカに回路マッチング依頼を出すという流れとなります。
しかし、やむをえない緊急事態があって、至急で依頼しなければならないという場合、時間をセーブする方法があります。
その方法というのは、サンプルを注文すると同時あるいは直後に評価用の基板を水晶メーカに送るという方法です。
サンプルができあがったら工場で基板と水晶を合体させて評価に入るというやりかたです。
事前にユーザの手元で発振が確認できていないというリスクはありますが、輸送その他の時間がセーブできます。
ユーザで何らかのトラブルがあり緊急事態の場合、九州電通ではこのような柔軟な対応を行っています。
※さらに詳しい内容は、こちらの書籍に掲載されております。
[特集] fsの超低ジッタと高周波化を実現するPLLの作り方
5G時代の低ジッタ GHzシンセサイザ設計基礎
トランジスタ技術編集部 / 編
定価880円(税込)
https://shop.cqpub.co.jp/detail/2512/